(35)ヤシの木が見えるコンド

 

うちのリビングルームからはヤシの木がみえます。

私はこのヤシの木がとても好きです。

ソファに座ってこのヤシの木を見ているときは

わたしにとって幸せな時間です。

 

今朝は雨が降っていて

シンガポールの暑さをも忘れながらこのブログを書いています。

 

お金や仕事や時間の心配をせずに、毎日こういう時間を過ごすのが私の理想ですが、それはまだ道半ばです。

 

1年前に「住む家」を探していた時は

家賃を安くすることを第一に考えていましたが

それとは別に家内と「どんなところに住みたいか」

という話もしていました。

 

意外なことに「窓から見える景色」がお互い大切なのがわかり

やっぱり夫婦だなあと思いました。

 

 

 

さてシンガポールで住むところを探す場合、

PropertyGuruというサイトで探すのが一般的です。

 

https://www.propertyguru.com.sg/property-for-rent

 

広さや場所、価格帯や築年数などを入れて検索すると、

その条件にあった物件を写真付きで表示してくれます。

 

気になった物件があればクリックすれば

詳細がみられます。

 

さらに物件の内覧をしたい場合は

エージェントのWhatsupへサイトから直接メッセージを送って内覧のアポを取ることができます。

 

 

このとき重要なのは、

そのエージェントのWhatsupでの対応もみることです。

 

 

アポの返信が遅かったり、なかったりする場合や

Whatsupがぶっきらぼうな場合は

たとえ物件が良さそうでも私は見送りました。

 

 

これから長く付き合っていくのは家だけではなくエージェントもそうだからです。

 

 

もし、その物件に決まった場合、

やりとりしている、そのエージェントが

その後のトラブル・シューティングなどの窓口になります。

 

 

ちなみに以前、住んでいたコンドのエージェントとは

今でも仲良くしています。

 

以前のコンドは家のトラブルが多かったですが、

彼女がすぐ対応してくれたおかげで

どの問題も比較的すぐに解決できました。

 

 

それ以外にも

健康保険や安い引っ越し業者も

彼女のつてで知ることができました。

 

 

これは、かなりラッキーなケースですが、

ひどいエージェントを選ぶと

家の問題の対応が遅かったり、

出る時に

アンフェアなお金をチャージされそうになったりと、

いろいろ面倒になるケースもあります。

 

 

 

去年は、このProperty Guruを使って

30件以上のエージェントに問い合わせて、

そのうち20件近くの内覧へ行きました。

 

その結果、

このリビングルームからの景色を手に入れて

家賃は10パーセントの削減することができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(34)さらなる生活費の削減を目指して

2021年の年明けは、引き続きの量的緩和の継続でSP500も順調に上がっていった。

資産もそのおかげで順調に増えていた。

 

仕事に関してはプライベート・バンクに入社して1年半が過ぎていたが、おおむね順調で入社以来の在宅勤務もまだ続いていた。

 

そのため交際費もかなり低く抑えられていて、生活費全般も低く抑えることができた。

 

その年、こどもが独立したことも生活費を抑えるのには大きかった。

 

私がどうやって節約したかについてはブログ(24)の「3年FIRE計画」を読んでいただきたい。

 

ここではそれ以外の小さな節約も挙げておこう。

 

(1)電気代を安い会社へ変更した。

(2)携帯の契約を安いプランへ変更した。

(3)UOBクレジットカードを使ってすべての買い物をした。そこから出るボーナス・キャッシュバックを生活費へ

(4)ボーナス金利が付く銀行口座に現金を預金。金利を生活費へ

 

すべての節約のおかげで2021年の生活費は前年の約20%減になった。

 

しかし、まだ大きなものが2つ残っていた。

 

「家賃」と「荷物を預けている倉庫の使用料」だ。

 

生活費に占める「家賃」と「倉庫の使用料」の割合は合計で44%とかなり大きかった。

設定した削減目標はそれぞれ10%減と2%減だ。

 

倉庫についてはコロナによる出入国の規制がこの当時はあったため、すぐにはできそうもなかった。

家賃については、この年の9月にその当時住んでいたコンドミニアムが契約満了を迎えるため新しく安いところを探すことができそうだった。

 

しかし問題もあった。

この当時、シンガポールの住宅価格が軒並み上昇していたのだ。

 

そのため、より安い家賃のコンドをさがすのが以前より困難になっていた。

 

コロナによる在宅環境への関心の高まりと、旅行の制限により余ったお金が住宅市場へ流れ込んでいたためだった。

 

しかし、ここからさらに生活費を下げるためにはより安い家賃の住居を探すのは不可避だった。

 

 

 

(33)投資プランとKPI

2020年はこうして新しい仕事に慣れながら、FIRE達成のための投資プランを決めることで過ぎていった。もう一度、投資プランをおさらいすると、

 

(1)2年分の現金を常に確保して暴落相場に備える

(2)投資の7割をSP500へ(インデックス投資)

(3)残りの3割を高配当株、または高配当ETFへ

 

(2)の投資額の4%と(3)から出てくる年間の配当金の合計が、年間の生活費を上回ればFIRE達成である。

 

Key Performance Indicator

’21年1月からFIREの達成状況も毎月みることにした。

 

下の図はそのために作ったもので一般的にKPI(Key Performance Indicator)と呼ばれるものだ。

タイトルのSLGs(Sustainable Life Goal)は最近はやっているSDGsに似せて作った私の造語だ。

 

では、具体的に例を挙げてどうやって目標達成の度合いを測っているかみてみよう。

 

FAT FIREの達成率(0のA)

たとえば0のAの項目は、

 

(毎月の不労所得)/(毎月の生活費)

 

でだしている。これが100%になれば引退できる。

毎月の不労所得は

 

(SP500への投資額 x 4% / 12)+(毎月の配当金受取額)

 

で出せる。もちろん配当金も投資額も変化するが、それでもおよその予想できる値はだせるだろう。

 

SIDE FIREの達成率(0のB)

SIDE FIREとは少し働きながら半分引退するというイメージだ。

仮に毎月$2000をバイトや副業で稼いだら引退できるか見る指標だ。

計算は簡単だ。

 

(現在の毎月の不労所得+$2000) /(毎月の生活費)

 

まずはこの指標が100%になるのを目指す。

 

現金クッション(1のE)

もし仮に下落相場に入ったとき、SP500を取り崩すのはあまり得策ではない。だれも値段の安い時にもっているものを売りたくないだろう。取り崩すのは相場が回復するまで待ちたいだろう。そんな時に緊急時の現金(生活費の2年分)をもっていれば、それを使って下落相場を乗り切れる。

 

この現金をただ持っているだけでなく、利息の一番高い銀行へ預けるのも重要だ。その利息は生活費の一部へ当てられる。どの銀行が良いかはGoogleで”Best Saving Account”などのワードで検索できる。

 

毎月の生活費(3のA)

毎月の生活費が少なくなっていけばそれだけFIRE達成もしやすくなる。もちろん生活費を減らす作業は今も続けている。

 

 

 

’20年に受け取った退職金と解雇一時金もすべて投資へ回した。さて、ここからFIREへの道のりは地味な積み上げの作業になってくる。

 

 

ウォーレン・バフェットの言葉に

ゆっくり金持ちになりたい人なんていない

 

というものがあるが

 

わたしはこの「ゆっくり金持ちになること」を目指していた。

 

 

(32)アメリカかそれ以外か

リストラ宣言された19年7月から現在まで、自分の主な投資先はよりアメリカになっていった。まずは理由を挙げてみよう。ただし、これはあくまでも私の個人的な意見だ。投資は自己判断でやっていただきたい。

 

(1) 株式市場が長期では成長している。

(2) 過去の苦い教訓から、アメリカ市場は投資家を守るために常に進化している

(3) FRB(アメリカ連銀) の一貫した金融政策が常にスピード感をもって行われていて経済を安定させている

 

この3つを満たしている市場、そしてこの3点でアメリカより優れている国があるだろうか?

 

(1) についてだが、日本などは未だにバブル期の日経平均を越えられずにいる。時価総額がちがうという議論もあるが、投資家にとっては長期で資産が増えたかどうかの一点のみだ。仮にバブル期に日経平均連動のインデックスファンドを買った場合、未だに利益が出ていない事実はかわらない。(このブログを書いている時点で)そんな市場へ自分の大切なお金を私は投資する気にはなれなかった

 

ではGDPが成長しているアジアの一部の国やラテンアメリカなどエマージングマーケットと呼ばれる国々はどうだろうか。

 

以前のブログでも書いたがGDPと株価の相関はない。GDPが上がっているからといって必ずしも株価が上がるわけではない。そして投資家が守られている株式市場が存在しているかも重要だ。

 

アジアには爆発力のある国があるのは否定しないが、どこの国の株価が最終的に伸びていくのだろうか。私はポーカーテーブルに座っているわけではなく資産を増やす投資をしている。より確実性のあるところに投資をしたい。

 

(2)については、アメリカはエンロンの粉食決済、リーマンショックなどの過去の教訓を経て、投資家を守るために様々なアメリカ発の規制を導入してきた。(例としてSOXやボルカールールなどがある。) 

 

一方で中国株の場合、投資をしても中国の企業は実質に共産党が所有しているはずだ。それで投資家が常に守られているかと聞かれると疑問である。不動産バブルの崩壊も懸念だ。

 

(3)についてだがFRBは失業率を低くコントロールしてインフレ率を適正に保つためにスピーディーな金融政策を行なっている。そしてポール・ボルカー以降、誰が議長になってもその政策は一貫しているようにみえる。翻って日本は白川総裁の時と黒田総裁の時で金融政策が全く違う。

 

またEUについてだが、あれだけ経済状態の違う国々がありながら、中央銀行が1つだけということに常に違和感があった。全ての国々にあった金融政策が機動的にできるのだろうか。納得がいかないのに自分の大事なお金を投資できない。

 

こうして考えると私にとっては投資先の選択肢はたくさんは残らなかった。

 

 

 

(31)結果を踏まえての投資戦略は

いろいろな投資での自身の失敗体験や、投資に関する本、などから導き出した投資戦略は

 

(1)2年分の現金を常に確保して暴落相場にそなえる

(2)投資の7割をSP500へ(インデックス投資)

(3)残りの3割を高配当株、または高配当ETFへ

 

なぜインデックス投資へ100%ではないかというと、日本人でFIREを達成している多くの人のある感想をきいたからだ。

 

「増やした資産を取り崩すのは、やはり抵抗がある」

 

という声だ。

 

FIREを達成した人たちは、トリニティ・スタディのことは当然理解している。トリニティ・スタディとはSP500へ全額投資してそれを毎年4%ずつ取り崩しても、ほとんどの場合で30年後でさえもその投資資産は残るというものだ。理論上は4%の取り崩し額が年間の生活費より大きければFIREできる。

 

しかし日本でFIREした人が例外なく言うのは、そうとわかっていても一度増やした資産を取り崩すことができずに結局、インデックス・ファンドと高配当株からの配当金と貯金の一部をつかって生活をしているというのだ。そして、せっかく積み立てたインデックス・ファンドには手をつけないのだ。

 

手塩にかけて育てた資産だ。取り崩すことを想像すると私も同じ気持ちになりそうだ。

 

では

「なんのために投資しているのか?」

 

と聞かれそうだが人間の感情とはそういうものではないだろうか? 

 

そして私もおなじように対策しておこうと思い、高配当株ETFへの投資も3割おこなうことにしたのだ。こうすれば配当金の受取額も増えて、その分はインデックス・ファンドを取り崩さなくても良くなる。

 

これで投資戦略の大枠は決まった。

しかし、もうひとつの課題がある。米国への一局集中投資で大丈夫かということだ。

 

「インデックス・ファンドの父」と呼ばれているジャック・ボーグルも全世界株のインデックス・ファンドを推していたはずである。

 

これについても何がいまのところの最適解なのかを検証してみたい。

 

 

(30)投資勝率2割8分

ここまでの私の投資の経緯を読んでいただいて、私を賢い投資家だと思った人はいないだろう。

念のため、私がリストラ宣言されてから投資した商品と、その結果をリストアップしてみた。

 

投資内容 現在の結果
VOOとQQQ インデックス投資 勝ち
DIV 米国高配当株ETF投資 勝ち
VIG 米国連続増配株ETF投資 勝ち
JPM Global Incomeファンド投資* 勝ち
金、銀、プラチナETF投資 負け
金鉱株ETF投資 負け
アジア株ETF投資 負け
QYLD カバード・コールETF投資 負け
中国株ファンド投資* 負け
ビットコインETN 投資 負け
BND 米国債ETF投資 負け
SPYD SP500銘柄高配当ETF投資 負け
AIによる投資 ほぼ0
中国高利回り債ファンド投資* ほぼ0

*は非上場投資信託

 

4勝8敗2分け 勝率2割8分6厘!

 

お世辞にも良い成績とはいえない。

野球の打率としてみたとしても微妙な数字だ。(私は野球に詳しくはないが、少なくとも首位打者になれる成績ではない。笑)

 

全体の勝ち負けの成績としてはかなりひどいが、問題は個々への投資金額の比重だ。

 

私の場合、投資金額の約7割をインデックス・ファンドへ振り向けている。そのため、全体としてのリターンは勝ちになっていて資産も着実に増えている。

 

仮にこれら上記の14の投資対象へ均等に投資をしていたら、私の資産は逆に減っていただろう。

 

ここで導き出されている結論はまさにインデックス投資を推奨する本に書かれていることが正しいことを証明しているのではないだろうか?

 

すなわち

 

インデックス・ファンドへ投資して放っておこう!

 

である。

 

銀行から薦められた3つのファンドは惨憺たるリターンだった。唯一のプラスのリターンをだしているJPM Global Incomeファンドもインデックス・ファンドのリターンには遠く及ばなかった。つまり、本で読んだ統計どおりファンド・マネージャーはSP500には勝てなかったのだ。

 

AIによる投資も同様にSP500には勝てなかった。それどころか’20年後半と21年を通して金融緩和全盛の時にAI投資はただの1ドルも投資額を増やせなかったのだった。もちろん毎月の手数料はしっかり徴収された。

 

私自身が選んだETFへの投資は言うに及ばずだ。自ら分析して投資を決めた米国株高配当ETFであるDIVはSP500のリターンを驚くことに少し上回り、連続増配米国株のETFのVIGはSP500とほぼ同じリターンをあげたが、ほかのビットコイン、金、金鉱株、米国債ETFなどへの投資リターンが悪すぎてトータルではマイナスだった。

 

 

 

(29)勘違い投資家の金への投資

この頃(’20年7月)は分散投資のため金への投資もはじめていた。

市場では金融緩和で大量のドルが市場へ流れ込み、一部は金市場へも流入して金の価格も押し上げるだろうという分析を聞いたのがまさにこの頃だった。金の市場の規模は債券や株にくらべるとかなり小さく、一部でもドルが流れ込めば金価格の上昇が期待できそうだった。

 

私の勤めていたプライベート・バンクの投資アドバイスでも金への投資をすすめているものが見受けられた。

 

決定的だったのが、あの投資の神様、ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイも金鉱株(金鉱山をもっている会社の株への投資)への投資をおこなったというニュースが流れた。

weekly-economist.mainichi.jp

 

「金は上がる!」と思った瞬間だった。

 

私は自分の投資のタイミングが絶妙だったと得意満面だった。

 

私の投資のバイブルでもある「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」のなかで

特定の株式銘柄やファンドマネジャーを選ぼうとする前に、自分に問いかける質問があります。

「私はウォーレン・バフェットだったかな?」

もし答えがノーだったら、地に足をつけたまま、インデックス投資を選びましょう。

 

このことをすっかり忘れていた私は、金への投資でいっぱしの投資家気取りだった。身の程しらずもいいところだった。

 

結果からいうと、私が欲を出してほとんどの金のポジションを買った7月と8月は金価格のほぼ天井だった。本当に賢い投資家たちはその時に売り抜けて利確し、収益は彼らのポケットへ入っていった。

 

金の価格はその後、期待していた上昇はなく、'22年の3月に上がりすぎたインフレ率を叩くためFRBが金融引き締めを開始した月から下がり始めた。

 

私の金のポジションはどうなったかというと含み損を抱えながらいまだに私のポートフォリオの一部になっている。

 

さて、金の価格がおもったほど上がらなかったのは、いつもなら金市場へ流れ込むはずのドルの一部がビットコインへ流れ込んだという分析をあとになって聞いた。そのビットコインへも投資をしたが、ここでも損失をだしてあえなく撤退した。

 

[Ref] 3月と4月に恐る恐る購入した金のポジションは今でも多少の利益を出しているが、その後に欲を出して購入した7月、8月の大きなポジション(下記のチャート上の赤い楕円部分)は現在も損失を計上している。

 

 

(28)分散投資の罠

’20年の7月より再開したSP500への投資と並行して、分散投資も行うことにした。コロナショックのような暴落がもしまた起こったときに、その動きをヘッジできる別の金融商品へ投資しておけばダメージも少なく抑えられる。

 

ではどんな商品で、私の投資したSP500をヘッジできるかというと例えば米国債などが浮かんでくる。なぜなら債券の価格と株価は相関が低く、あまり一緒に動かないからだ。つまりひとつの投資から損失がでても、もうひとつがカバーして損失を減らしてくれる。

一緒になって下がってしまう商品ではリスクヘッジはできない。

 

こんなシナリオが考えられる。

 

(1)株価が暴落して失業率が上がる

(2)FRBが金利を下げる

(3)債券価格が上がってくる

 

金利と債券の価格はシーソーのような関係なので(2)がおこれば(3)がおこる。

 

まさにコロナショックでも起こったようなシナリオだ。

 

このシナリオで株(SP500)しか持っていなかったのがコロナショック当時の私だった。

 

もしここで債券も同時に持っていたら、しばらくしてから(3)が起こって債券からは収益がでていたはずだ。そうなれば株の損失を多少吸収してくれていたはずだ。

 

これが分散投資によるリスクヘッジの一例だ。

この考え方に沿って米国債のETF(BND)への投資も7月くらいからSP500への投資の再開と同時にはじめた。

 

一見すると正しい行動のように聞こえるかもしれないが、わたしはこんなことはもうやらない。

 

なぜか?

 

このとき、FRBは金利を最低レベルの0〜0.5%に誘導している。ということは米国債の価格も高値レベルにあるといえる。わざわざ商品の値段が高いときに、なぜ値段の高い商品を買いにいくのだろうか?

 

もうすこしシナリオをすすめてみよう。

(1)失業率を下げるためにFRBが金融緩和をする

(2)株価が上がってくる

(3)失業率が下がってくる

(4)インフレ率が上がってくる

(5)FRBが金利を上げる

(6)債券価格が下がる

 

かなり単純化したシナリオだが

こうなるとヘッジのために買った債券の価格が下がり、損失がでるということだ。たとえリスクが減ろうと、こんな損失を前提とするリスクヘッジはやるべきだろうか。

 

普段の生活で1年後に値段が下がりそうなものを今日買うだろうか? 私のとった行動はまさにそんな行動だった。

「リスクはただ分散すればよいというものではない。」ということを学んだ。

 

[Ref] 下のチャートはヘッジのために購入したBNDのものだ。私の購入時期は赤い楕円で囲まれた部分だ。購入時期から金融引き締めがはじまった今年の3月まで見事に下落トレンドに入っている。

念のために、コロナショック時の三月は株も債券も両方さがっている。これはマーケットの参加者の多くが持っている金融商品を現金にかえるからだ。「寄らば大樹の陰」人間はなにか起こったときには現金をもっておきたくなる。

 

(27)コロナショックと金融緩和

’20年3月にコロナショックで底をうった株式市場は、その後すごい勢いで回復した。FRBが大型の金融緩和を開始したのだ。政府も現金給付などの支援策を打ち出しその勢いを後押しした。そして7月には年末の水準を回復していた。

 

この頃まで怖気付いていて少額の投資しかできていなかったが、意を決して7月から本格的にSP500への投資を再開した。

 

二番底を心配する声も市場には引き続きあったが、かまわず8月にも継続してインデックス・ファンドへの投資を継続した。

 

9月には株式市場は下落したが、結局二番底らしい二番底は訪れず、10月には再度上昇して3月のコロナショック以来、損失をかかえていた私のポートフォリオは、わずか0.3%だったがようやくプラスに転じた。

 

余談だがこの頃、

「経済は回復していないのに、株価が上がるのはおかしい。こんなおかしな時に株へ投資はできない。」

という声をよく聞いた。

 

これに対する反論は、

株価というのは、すでに経済状況が金融緩和で好転する未来を織り込んでいるので、実際の失業率やGDPの改善よりはやく上がっていく。(効率的市場仮説)

である。

 

ちなみにGDPと株価の間に相関は認められていない。たとえGDPが上がっても株価も同じようにはあがらないのだ。

GDP & Stock Market Returns (DJIA) | Seeking Alpha

 

こんなこともよく聞いた。

「いまの株価は高すぎる。いまは買ってはだめだ。これから下落局面がくるはずだ。私はその時買うつもりだ。」

 

ちなみにこの意見を言っていたのは、投資銀行に10年以上勤めている者友人数名を含めて複数存在した。

 

なにをもって高すぎるのか?

PERの平均と比べて割高なのか? バフェット指数が100を上回っているから割高なのか? ファンダメタルと比較して割高なのか?

 

そして彼らの答えは

「一本調子で上がり続けているのはおかしい。」

という理由だった。

つまりなんの根拠もないイメージだったのだ。

 

ちなみにシンガポールでもよく使われているSimply Wall Streetという株の分析をしてくれるアプリで、この当時のVOO(SP500に連動するETF)の時価を確認したが、VOOの当時の価格は実際の価値(マーケット・バリュー)よりかなり割安だという評価だった。

 

そしてSP500は結局その後、翌年の12月まで上昇を続けた。空前のブル・マーケットの到来だった。

 

少なくともFIREや投資に関してはイメージではなくデータをみて行動しようと思わせる経験だった。

 

 

 

(26)あたらしいプライベート・バンクの仕事

’20年の5月をもって10年以上勤めた投資銀行をやめ、6月より自身4社目となるプライベート・バンクでの仕事がはじまった。

 

プライベート・バンクは、おもに富裕層の顧客の資産にたいしての資産運用のアドバイスと、それに付随するサービスをおこない対価として手数料ももらい収益をあげている。

 

注1:これ以降は少しわかりずらいかもしれないので、興味のない人は読み飛ばして注2へ進んでください。笑

 

アドバイスの内容は資産運用のために金融商品を薦めるだけでなく、顧客の金融商品を担保にお金を借したり(一般的にAsset Pledged for Loanとよばれている。)、新規株式公開(IPO)や社債発行、M&Aなどを投資銀行部門と協力して顧客のためにおこなったり、そのほかにも相続や税金についての相談など多岐にわたる。

 

それ以外にもヘッジファンドなどが顧客になっている場合もある。彼らの場合、投資方針は明確で資産運用のためのアドバイスは必要としないが、かわりにプライベート・バンクが彼らのやりたいデリバティブの取引相手になったり、カスタマイズした商品を彼らのために組成したりもする。

 

上記の2つのタイプの顧客資産を通常、Asset Under Management(AUM)に選別され、高額の手数料がもらえる。それぞれのリレーションシップ・マネジャー(RM)はこれらの資産をどれだけ集めたかが成績になる。

 

顧客によっては持っている金融商品の保管だけをプライベート・バンクにまかせて、その金融商品からの配当金や利息だけを受け取っているケースもある。こういった顧客資産はAsset Under Custody(AUC)と選別され、収益が限定的なため、RMの成績としては考慮されない。

 

注2:読み飛ばした方はここから読んでください。

 

私の所属したチームはプライベート・バンクの社内ルールの基づいて顧客資産を選別する仕事をおこなっていた。この選別によってリレーションシップ・マネージャーの成績も決まるので、彼らにとっては一番重要な指標と言っても過言ではない。

 

その仕事のなかでいろいろな投資アドバイスに触れることになるのだが、投資にすっかりはまっていた私にとって、それは「趣味と実益」を兼ねたようなものだった。

 

「好きこそものの上手なれ」

 

その年の11月にはその部署で一番重要な仕事のひとつをまかされていた。

 

 

(25)失敗体験から成功体験へ

さて、ここまで読み進んでなにか私がFIRE達成に向けて難しいことをやっているだろうか? 私が長々とブログで書いてきたことを要約すると

 

無駄な生活費を減らして、余ったお金をインデックス・ファンドへ投資する。

 

これだけだ。

誰でもできる。

これを私が面倒くさがらずに、先送りせずに20代でやっていれば、こんな「失敗談」のブログも書かなかっただろう。そうしていればリストラされても動じず、それどころかFIREをすでに達成していただろう。

 

わたしは仕事のなかでリスク・マネージメントを人に教えていたが、自分の人生ではその知識をまったく活かせていなかったのだ。

 

さて、この失敗談をただの失敗談におわらせるか、糧にするかは私次第だ。自分の人生の時計を戻すことは叶わないが、これから社会人としての船出をする自分の子供がこの「失敗談」をいかすことはできる。ここでようやく「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」の著者とおなじ気持ちになったのだ。これがわたしがこの本を強く薦めるもうひとつの理由だ。

 

失敗体験というのは成功体験などよりしばしば説得力をもつように思う。このブログで書いた内容を面白おかしく子供に話すと、熱心に耳を傾けてくれただけでなくすぐに証券口座を開ける手続きをして、持っているお金をETF(上場投資信託)へすべて投資してしまった。ここでの「すぐ」というのは一週間後でさえなく、文字通り話を聞いた直後に証券口座を開ける手続きをしてしまったのだ。この口座は1年後に事情があって閉じられて、新しい証券口座へ移すことになるのだが、その時には我が子の資産は10%も増えていたのだ。

 

私の失敗体験はこうして我が子の成功体験にかわった。

 

 

(24)3年FIRE計画

あと9年で引退できれば、60歳が普通の引退年齢とした場合、それより2年も早い。そんなことはわかっているが、問題は私がそれで納得できるかどうかだ。

 

答えはNOだ。

 

そうであれば、生活費を下げるか資産を増やしてもっと早く引退するしかない。わたしは生活費をへらすことにした。

 

さっそく生活費の内訳に目を通した。大きなコストをどうするかが肝だ。下の内訳をみると(1)から(4)までのコストで全体の9割以上になっている。これをどう減らすかが問題だ。

 

項目 現状 削減目標
(1)家賃 42% -10%
(2)食費やその他の生活費 22% -2%
(3)おこずかいと交際費 15% -11%
(4)年金型保険の定額積立 12% -12%
(5)光熱費 3% -1%
(6)通信費 2% -1%
(7)倉庫の使用料 2% -2%
(8)日本人会の会費 1% 0%
(9)日本のテレビ視聴料 1% 0%
合計 100% -39%

 

まず(1)の家賃だが、娘がもうすぐ独立して、この広さの家は必要なくなる。もう少し小さめのコンドミニアムを探して家賃の安い場所をさがすことにした。この当時住んでいたコンドミニアムの契約が1年半で満了なので、目標家賃で探すことにした。このとき設定した目標家賃はかなり現実的だと考えていたが、その後、現実を思い知らされることになる。

(2)の「食費やその他の生活費」だが、一週間ごとに妻に定額のお金をわたしてそのなかからやりくりしてもらっていた。その額を少し減らさせてもらった。

(3)はおもに自分の交際費だ。これは大幅に減らすことにした。幸いコロナの活動制限で友人との会食もできなくなり、リモート・ワークで出社することがなくなり日々の昼食代も必要なくなったのでそれほど難しくなかった。

(4)の「年金型保険の定額積立」はすぐにやめることにした。「金持ち父さん、貧乏父さん」ではお金を財布から奪っていくのは負債なので、この年金型保険は負債ということになる。中途解約の費用はかかるが返戻金をインデックス・ファンドへ投資すればこのお金は負債から資産に化ける。

付与されている死亡保険のかわりは、自分のもっている金融資産を妻に引き継がせるようにすれば解決する。遺書を用意して、すべての金融資産を死亡時に妻に渡すと書いて渡した。これで全て解決だ。

 

こうして生活費を39%減らした。(プランも含めて)そこに医療関連の費用やその他の変動費を足しても、変動費を含めたすべての生活費は当初の金額から26%減った。

 

これをもとにもう一度FIREできる年齢を計算すると52歳になった。

こうしてわたしの3年FIRE計画が始動をはじめた。

(23)58歳でFIRE達成!?

生活費 < 不労所得

 

さてこのFIREの不等式で大切なことは生活費を下げれば下げるほど必要な不労所得も減っていくということだ。そしてFIREできる時期もはやくなっていく。

 

まずは現状の毎月の生活費を把握することが大事だ。

これはもちろん家計簿つけて把握していく。そして毎月かかる固定費とそれ以外の変動費を以下に分類した。

 

(1) 家賃

(2) 食費やその他の生活費(上限を決めて固定費扱いにする)

(3) 交際費(上限を決めて固定費扱いにする)

(4) 電気代

(5) 水道代とガス代

(6) 通信費(インターネットや携帯料金)

(7) 年金型保険の定額積立

(8) 日本人会の会費

(9) 日本のテレビ視聴料

(10)日本で使っていたものを保管している倉庫の使用料

(11)健康関連費用(歯科検診、健康診断、健康保険料)

(12)その他の変動費

 

まずは現状の固定費((1)から(10)まで)と資産の数字をもとにFIREまでの年数を計算してみた。わたしはEXCELで自分で計算したが、以下のリンクのようなFIREまでの年数を計算できるツールをつかって計算することもできる。

 

FIRE Calculator | MoneyUnder30

 

現状の数字をもとに計算するとFIRE達成は9年後という結果がでた。

 

「あと9年も社畜人生など絶対に嫌だ!」

 

それが私の正直な感想だった。

 

 

(22)FIREされてFIRE目指す!

さてリストラ宣告から8ヶ月経った2020年3月、たくさんの人に助けてもらってようやく3つの課題を完了することができた。

 

(1)新しい仕事をみつける---> プライベートバンキングの仕事をすることになった

(2)家族でシンガポールの永住権を取る---> 永住権を3月に取得した

(3)給料以外からの副収入を得る---> 2019年後半よりETFや投資信託への投資で配当金を受け取れるようになった(この当時はコロナショックで多額の含み損を抱えていた・・・)

 

この結果にもちろん家族は安心してくれた。(と思っている。笑)

とりあえずピンチを脱して自分は安心できたかというと実はそうでもなかった。

 

リストラがきっかけで自分がいかに無防備でリスク管理を怠っていたか痛感したからだ。今後、またリストラをされても生活できるようにしておかなければならなかった。FIRE(解雇)されたことをきっかけにFIRE(経済的自立をして早期退職)

を目指そうと考え、それを新たな目標として設定することにした。

 

FIREが何かをおさらいすると

「FI」はFinancial Independece: 経済的自立

「RE」はRetire Early:早期退職

 

という意味で「不労所得で生活できるようにして早期退職しよう」という概念だ。達成の難易度は別にして、リストラ宣告後の苦しかった時に読んだたくさんの本からどうやるかはわかっていた。そして簡単な不等式でFIREはあらわすことができる。

 

生活費 < 不労所得

 

こうなればFIRE達成である。

 

ここでいう不労所得とは投資から得られる収入のことである。

わたしが考えていた投資はETFへの投資で対象は当然SP500だ。

その投資を4%ルール*1にしたがって毎年4パーセントずつ取り崩していこうと考えていた。

では投資額がいくら必要かというと、それも式があって1年間の生活費の25倍になればよい。たとえば1ヶ月の生活費が3,000ドルの場合、1年間では36,000ドルになる。それの25倍は900,000ドルなので、SP500のETFへ900,000ドル投資できると、毎月3,000ドルで生活している人は仕事を辞めてFIREできることになる。

 

さて、ここからいよいよFIREへの旅へ出発することになる。

 

 

 

*1 SP500のインデックス・ファンドへ投資して(米国債への投資との組み合わせのパターンも入っている)毎年4パーセントまでの取り崩しをおこなうと、投資したお金の減る速度が遅くなって長持ちする確率が高くなり、むしろ当初の投資額より増えるケースもあるという研究。詳しくはググってみてください。

 

 

 

 

 

 

*1:

(21)プライベート・バンキングの仕事

永住権が承認されてからしばらくして2つ目の朗報が届いた。

 

8月に人事と電話面接を欧州系のプライベート・バンキングからファイナンス部で空きポジションが出たが興味はあるかとの連絡を受けた。

 

仕事内容を確認すると経験のない仕事だったが、いままでの経験があればできそうな内容だった。さっそく仕事を受けたいとの連絡をすると、すぐに面接を受けることになった。

 

面接は今回も電話面接で合計2回やることになった。

今回の面接対策は2つに絞った。

まずはプライベート・バンクの仕事をざっくり理解して面接の中で細かい仕事内容を質問をしながら理解していくこと。そして、自分がいままでやってきた仕事を簡潔に説明できるようにすることだ。

 

経験がない仕事を面接でわかったように、できるように面接で言うというやり方もあるが自分のスタイルではない。それよりも仕事の基本情報を頭にいれてわからないところを質問して理解していく方が相手も信頼してくれる。あとは出たとこ勝負だ。

 

幸いにも面接官の1人は私が以前やっていた仕事を経験していた。彼女の質問も当然鋭くなるのだが、こっちも20年以上それで飯を食ってきている。面接官もわたしの回答に納得してくれているようだった。

 

2人目の面接官は穏やかな人物だった。面接では人が大量にやめてしまって大変だということを聞いたが、こちらも辛い経験なら山ほどしてきた。いまさらもうひとつ加わってもたいした話ではない。

 

面接ではキャリアアップは考えているのかという質問も受けた。

私は正直に

 

「考えていません。この仕事を3年やって引退します。」

 

と答えた。

 

正直に答えたのにはふたつ理由があった。

ひとつはそれが本当のことだということ。もうひとつは自分を雇ったとしても、管理職側が次のステップの心配をしなくていいからだ。外資系金融にはいってくる人たちはだいたい積極的に昇進の希望もつたえてくる。一方でシンガポールの金融業界の縮小のせいもあってか昇進させるのが以前にくらべて難しくなっている。しかし私を雇った場合、その心配はないというのは管理職側にとって精神的な負担が少なくなる。

 

面接を終えてから2週間後、3月が終わりを迎えようとしていた頃、わたしのところに採用通知が届いた。こうしてもうひとつの課題も完了した。