(26)あたらしいプライベート・バンクの仕事

’20年の5月をもって10年以上勤めた投資銀行をやめ、6月より自身4社目となるプライベート・バンクでの仕事がはじまった。

 

プライベート・バンクは、おもに富裕層の顧客の資産にたいしての資産運用のアドバイスと、それに付随するサービスをおこない対価として手数料ももらい収益をあげている。

 

注1:これ以降は少しわかりずらいかもしれないので、興味のない人は読み飛ばして注2へ進んでください。笑

 

アドバイスの内容は資産運用のために金融商品を薦めるだけでなく、顧客の金融商品を担保にお金を借したり(一般的にAsset Pledged for Loanとよばれている。)、新規株式公開(IPO)や社債発行、M&Aなどを投資銀行部門と協力して顧客のためにおこなったり、そのほかにも相続や税金についての相談など多岐にわたる。

 

それ以外にもヘッジファンドなどが顧客になっている場合もある。彼らの場合、投資方針は明確で資産運用のためのアドバイスは必要としないが、かわりにプライベート・バンクが彼らのやりたいデリバティブの取引相手になったり、カスタマイズした商品を彼らのために組成したりもする。

 

上記の2つのタイプの顧客資産を通常、Asset Under Management(AUM)に選別され、高額の手数料がもらえる。それぞれのリレーションシップ・マネジャー(RM)はこれらの資産をどれだけ集めたかが成績になる。

 

顧客によっては持っている金融商品の保管だけをプライベート・バンクにまかせて、その金融商品からの配当金や利息だけを受け取っているケースもある。こういった顧客資産はAsset Under Custody(AUC)と選別され、収益が限定的なため、RMの成績としては考慮されない。

 

注2:読み飛ばした方はここから読んでください。

 

私の所属したチームはプライベート・バンクの社内ルールの基づいて顧客資産を選別する仕事をおこなっていた。この選別によってリレーションシップ・マネージャーの成績も決まるので、彼らにとっては一番重要な指標と言っても過言ではない。

 

その仕事のなかでいろいろな投資アドバイスに触れることになるのだが、投資にすっかりはまっていた私にとって、それは「趣味と実益」を兼ねたようなものだった。

 

「好きこそものの上手なれ」

 

その年の11月にはその部署で一番重要な仕事のひとつをまかされていた。