(13)銀行の薦める投資商品
ここで少し銀行と個人投資家の関係を話していこう。
シンガポールの銀行で金融商品を購入すると大抵リレーションシップ・マネージャー(RM)がつく。彼らRMが窓口になって投資の相談にのってもらえる。
RMのうしろにはお薦めの投資商品を準備するチームがあり、それらをもとにRMが窓口になって顧客にセールスする仕組みだ。
投資商品の例としては
(1)アクティブファンドを中心とした投資信託
(2)ストラクチャード・プロダクト
(3)レバレッジング*
などである。
*持っている投資信託や株を担保として銀行へ差し入れてお金を借り、そのお金でさらに違う金融商品を購入して投資額を増やす手法
ここまで聞くと良さそうなサービスに聞こえるかもしれないが、問題はこれらのお薦めの金融商品が顧客にとってかならずしもお薦めではないということだ。
そしてこれらの商品の取引相手は常に銀行だということだ。彼らの第一の目的は銀行の収益をあげて運用額(AUM)を増やすことだ。
そもそもセールスされる商品は彼らが用意したものだ。あなたはセールスされる商品の本当の価値や中身がわかるだろうか? いくら手数料がチャージされているかわかるだろうか? 私はわからないので取引はしない。
私は金融工学で学位をとり、金融に二十年以上勤めているが彼らの薦めるストラクチャード・プロダクトの現在価値を正確にだすのは無理だろう。
もうひとつ私が中国ハイイールド債ファンドを売却する一週間前のRMのコメントも紹介しておこう。
「いま売るのはまだ早い。もう少し待っているいるべきだ。」
現在のファンドの価値は買った当時の4割ほどになっている。
銀行に頼ったからといって資産が増えるわけではないのだ。